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中国、処方薬のネット販売をついに解禁か

中国市場

2020.11.24

ネットで処方薬を購入することは、各国の規制によりその考え方や対応が異なっている。米国ではネットで処方薬を購入することは可能である。Amazonに買収されたオンライン薬局企業ピルパック(PillPack)はその代表的企業であった。しかし、日本でネット購入できる医薬品は一般用医薬品(要指導医薬品を除く)に限られている。

 

従来、中国当局は処方薬のネット販売について慎重であった。2018年公布された「医薬品のネット販売の監督管理規則(パブコメ案)」(以下、パブコメ案と略す)では、処方薬のネット販売を禁止し、個人消費者を対象にしたネットでの処方薬情報提供についても否定的な見解であった。しかし、2019年8月『中国薬品管理法』が改訂され、ネットで販売禁止される対象に、処方薬がなくなった。“処方薬のネット販売を認めない”などの規制の一部を解除し始めた。

今年の新型コロナウイルスの感染拡大が規制緩和の動きをさらに加速させ、2020年11月「医薬品のネット販売の監督管理規則(パブコメ案)」が再び発出された。本規制が実施されると、ある一定の管理下における処方薬のネット販売や情報提供が可能になる。

 

新型コロナの対応経験から規制緩和へ

新型コロナウイルスの感染拡大の中、阿里健康(アリヘルス)、京東健康(JDヘルス)、平安好医生(Ping An Good Doctor)、微医集団(ウィードクター)など、ネット医療サービスを提供するメディカルテック各社は、無償でネット診療、遠隔医療のスタートアップの提供、マスクや治療薬の手配など、新型コロナウイルスの感染予防と管理において、重要な役割を果たし、社会や政府に認められた。また、オンライン医療サービスに対する一般の人々の受け入れも大幅に改善し、政策を大きく後押しした。

実際に新型コロナウイルス感染のピーク時、行政側の衛生健康委員会は、患者の診断や治療にネットによる遠隔医療を十分に活用し、病院にオンライン診療を提供するよう指示を出した。江蘇、武漢、上海などでは、遠隔医療の保険適用も認められた。院内感染を恐れて医療機関を受診しない感染症以外の患者にとってネットを介した治療や助言を求める遠隔医療は好都合であった。したがって感染拡大につれて、インターネットを介した遠隔医療という新たな産業が拡大した。

 

厳格な管理の下でネット販売が可能に

パブコメ案では、医薬品のネット販売の管理要件を明確にしている。電子処方箋の信頼性を確保することを前提に、処方薬のネット販売が許可されている。販売要件を満たす会社のみ、処方薬の情報を一般向け公開することが出来る。

医薬品のネット販売者は、医薬品販売承認保有者(以下、MAHと呼ぶ)または医薬品販売・流通企業であって、許可された経営範囲(事業内容)を超えないことを規定している。

そして、ワクチン、血液製品、麻薬、向精神薬、医療用毒性薬、放射性薬、医薬品前駆体化学物質、および国によって特別な管理が必要なその他の薬は、ネットでの販売をしてはならない。

医薬品のネット販売者は、販売の停止、品質上の問題や未知の安全性に問題がある医薬品の回収などの措置を講じ、対応する情報をWebサイトまたは事業活動のメインページにタイムリーに公開することが義務づけられている。

記録保管については、医薬品のネット販売者は、供給元の資格証明書、購入および販売記録、電子オーダー、薬学サービスなどの完全な記録を保持する必要がある。処方薬を販売する場合は電子処方の記録を保持する必要がある。 関連する記録は、少なくとも5年または薬剤の有効期間+1年のどちらか長い期間保存しなければならないと規定されている。

そのほか、ネット販売者の義務や輸送管理、リスク管理、第三者のプラットフォームの義務や要件、当局からの監督管理、違反した場合の罰則等も示されている。

 

メディカルテック企業にとって有利な政策

中国において、インターネットショッピングは、人々の生活に浸透し、eコマースの環境はより成熟している。そのため、インターネット+医薬品+医療保険の政策も徐々に自由になってきており、処方箋による医薬品のネット販売の需要はますます増えている。

MENETのデータによると、2019年の中国の医薬品売上高は約1.8兆元で、前年比4.8%増加した。そのうち、小売薬局は4,196億元に達し、前年比7.1%増加した。 ある医薬品コンサルティング会社の創設者のコメントによると、「現在、処方薬の主な販売チャネルは医療機関や診療所などです。量的購買の実施に伴い、多くの製薬会社が販売の焦点を薬局に移している。薬局にとってもOTCより処方薬の方がより利益が高いので積極的に処方箋を受け入れるだろう」とのことであった。

IQVIAのデータによると、当局の政策により病院と医薬品の販売は徐々に分業化し、院外処方薬は約4,000億〜5,000億元の規模があり、そのうち小売市場は約3,000億元と予想している。処方薬のネット販売は、メディカルテック企業には巨大な市場をもたらすことになる。同時に実店舗の薬局にとっても、インターネット+チェーン店の形で、規制上の障害もなくなり、ネット販売と対面販売は、互いに補完し合い、より大きく成長すると期待される。

またメディカルテック企業との協業は製薬会社にとっても、処方薬の情報を一般向けに公開でき、優れた営業方法になる。

 

既存の医薬品販売店舗から厳しい声も

パブコメ案が発出してから、医薬品販売業界に大きな影響を及ぼした。11月14日、第15回中国成長製薬企業発展フォーラムで、売上が200億元以上の2つの医薬品販売チェーン店の取締役は全国各地の薬局のトップに、積極的にNMPAへ意見具申するよう呼びかけた。15日、そのような意見をまとめた資料によると、安全性は医薬品購入の主要な前提条件であって、処方薬の不適切な管理は、命と健康に不可逆的なリスクをもたらす可能性があると当局に慎重な姿勢を取るように意見を示した。そして、地区ごとの行政範囲内で、ネットで予約した処方薬の実店舗での受け取り等の提案も示した。

また処方薬のネット販売が可能になると、「地域を越えて販売できるため、患者の権利を保護することは難しくなる」と指摘することもあった。「薬局は特定の処方薬の在庫があるといった看板を入り口付近に置いただけ罰せられる可能性があるが、処方薬の情報はインターネット上に無制限に公開され、罰せられることがないことは不公平であり、また、過度のマーケティングにもつながり、薬物乱用や人々の健康に害をもたらしかねない」と、処方薬のネットでの情報公開についても否定的な意見を示した。

 

 

今回、処方薬のネット販売及び情報公開のパブコメ案が出て、中国の医薬品業界には大きな波紋が起きた。現時点では意見が分かれており、賛否両論ではあるが、改訂『中国薬品管理法』から見ると、処方薬のネット販売は禁止されないだろう。またコロナ感染の対応経験からも、行政側からより具体的な施策を示す必要性が高まってきた。禁止することより、どのように具体的に管理するかが当局にとって大きな課題であろう。

 

患者本位で製剤開発/工夫を行う日本の製薬会社にとって、今後の中国での販売戦略の1つとしては、メディカルテック企業(もしくは既にメディカルテック企業と提携している代理の製薬企業)との連携を選択肢に考えることも悪くないだろう。今年に入ってから塩野義製薬が中国平安保険グループとの合弁、エーザイとJDヘルスの健康サービスプラットフォーム構築に向けた合弁会社の設立などは中国の現状を見据えた深謀遠慮の結果だと思われる。

 

 

1.阿里健康(アリヘルス)は、電子商取引大手アリババ集団傘下の医療関連のネットサービスを手がける会社。今年9月16日、安全な服薬AIシステム、家族クラウド薬箱などオンラインユーザーの服薬の安全性を確保するための一連の対策が含まれる「中国家庭安全用薬計画」をリリースした。京東健康(JDヘルス)は、中国EC大手「京東(JD.com)」傘下のヘルスケア企業、主に医薬品&ヘルスケアEC、オンライン医療、ヘルスケアサービス、スマートソリューション関連のビジネスを手掛けている。平安好医生(Ping An Good Doctor)は中国の大手保険会社が運営する医療アプリ、微医集団はネット大手の騰訊控股(テンセント)が出資する遠隔医療のスタートアップである。

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