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国家レベルの量的購買の効果 〜 医薬品購入費 年間539億元(約8,624億円)の削減 〜

中国市場

2020.10.26

10月14日人民日報の報道で、国家レベルで実施された医薬品の量的購買の評価結果が公表された。今回はその報道を紹介するとともに、量的購買の影響を確認したいと思う。

 

「これまでに、国家レベルの量的購買は、112品種の医薬品を対象に、合計3回実施され、平均54%の価格ダウンを達成、患者の自己負担が大幅に軽減された。その結果、より多くの患者が薬を購入可能になり、医薬品へのアクセスが大幅に向上した。これらは、品質再評価に合格した後発医薬品および先発医薬品でもあるため、患者が使用する医薬品の品質も向上した。同時に、医薬品業界の改善や公立病院の改革にも繋がっている」と量的購買の結果を高く評価した。

 

記事では自己負担軽減を実感した1人の患者を紹介している。上海市在住の69歳の非小細胞肺がん患者の女性が、2019年3月20日処方されたゲフィチニブ錠(商品名イレッサ)の価格は、1箱2,280元(約36,480円)から547元(約8,752円)になり、その結果、月々の自己負担額は2,730元(約43,680円)から630元(約10,080円)に下がり、女性を驚かせた。ゲフィチニブ錠は、1回目(2018年11月の「4+7都市」)でアストラゼネカが547元(約8,752円)/箱の価格で落札し、少ない費用で薬を服用できるようになった。

このように、ゲフィチニブ錠のような高額な輸入先発医薬品も、量的購買によって大幅な値下げとなり、これまで高価だった医薬品も必要な患者が使用できるようになった。

 

費用の大幅削減

また112品種の平均54%の価格ダウンによって、合意された購買量に基づいて計算した年間の購入費用が659億元(約1兆544億円)から120億元(約1,920億円)に減少し、539億元((約8,624億円)の削減をもたらした。 例えば60%の償還率で計算すると、患者全体で216億元(約3,456億円)を節約し、保険基金においては323億元(約5,168億円)を節減することができた。 その顕著な例として、B型肝炎の治療薬:テノホビルジソプロキシルフマル酸塩及びエンテカビルの年間治療費は、2015年では約2万元(約32万円)及び9,000元(約144,000円)であったが、量的購買の結果、約70元(約1,120円)に下がり、世界保健機関(WHO)からも高く評価されている。

 

医薬品アクセスの向上

量的購買が実施される前、慢性B型肝炎の約3,000万人の患者のうち、治療率はわずか11%であり、約2億4,500万人の高血圧患者も、血圧コントロール率はわずか17%であった。量的購買による大幅な医薬品価格の引き下げによって、「4+7都市」のパイロット地域では、B型肝炎薬エンテカビルの売上数は6,800万錠から2億700万錠に増加し、服薬患者数もほぼ2倍に増加した。 また、高血圧薬のアムロジピン、イルベサルタン、ロサルタンの売上数も倍増した。量的購買は患者の医薬品へのアクセスを大幅に向上させた。

 

医薬品の品質向上、保障レベルの改善に寄与

「4+7都市」のパイロット地域で、品質再評価に適合された後発医薬品、先発医薬品が使用される割合は50%から90%以上に増加し、使用する医薬品の品質レベルが向上した。またこの費用の大幅削減は、慢性疾患や重篤な病気の保険償還の割合増加や、革新的な医薬品の保険償還リストへの収載などに寄与し、全体の医療保障の改善につながるとコメントした。

 

購買目標の達成

記事によると、「「4+ 7都市」で落札された25品種の実際の購入量は、合意された目標購入量の2.4倍にも達し、同じ有効成分の医薬品購入量の78%を占めた。2019年9月の量的購買(25都市拡大)においても2020年8月末現在、実際の購入量は目標購入量の1.8倍に達している。2020年1月実施された量的購買(第2回目)も8月末までにすでに目標購入量の74%に達した。

 

後発医薬品の普及率アップ

「4 + 7都市」で落札された品目の販売量は、大幅に増加し、25品種のうち20品種の同一品種における市場シェアは10%以上増加した。パイロット期間中、先発医薬品の販売シェアは33%から17%に減少し、2回目以後には11%に減少した。 品質再評価適合の後発医薬品は、先発医薬品の代替薬として普及するようになった。

 

販売経費の削減、研究開発への投資増

量的購買は、主に従来の医薬品流通販売体制を一変させ、販売及び流通経費を大幅にカットし、製薬企業への支払いの確保につながると分析された。主要企業のデータによると、落札品目の営業人数は平均で49%圧縮されており、売上高に占める販売費の割合は40%から5%-10%に低下した。 2回目の量的購買の実施以来、落札品目の調達の進捗は予想よりも速く、製薬企業への支払い率は100%に近く、企業のキャッシュフローの維持と生産増の促進に重要な役割を果たしたと分析された。

また、営業経費の削減により、企業は研究開発や品質保証等に重点を置くようになった。これにより製薬業界の全体的な革新と開発レベルの向上が期待される。複数の落札品目を持つある企業では、2019年の研究開発への投資は39億元(約624億円)に達し、前年比46%増加した。別の企業は37億元(約592億円)を研究開発に投資し、今後3年以内に100億元(約1,600億円)に達すると予想している。

 

 

上掲の通り、中国主要メディア「人民日報」の量的購買に関する評価結果を紹介した。そのデータから分かるように量的購買の効果は絶大であった。従来の中国の医薬品流通販売体制を一変させ、完全に新しい流通販売制度を構築したといえよう。しかし、具体的なデータを日本と対比すると、大きな差がない点もある。

例えば、販売経費について、「売上高に占める販売費の割合は40%から5%-10%に低下した」とあるが、それは従来の40%が異常値であったと思わざるを得ない。5%-10%に低下して、通常値に戻ったと捉えた方がよいと思われる。

また、医薬品アクセスの向上についても、「慢性B型肝炎の治療率11%、高血圧患者の血圧コントロール率17%」という量的購買以前のデータからも分かるように、元来低かった医薬品へのアクセスが、量的購買によって徐々に向上してはいるものの、更なる向上にはこれからの取り組みが重要と思われる。そのほか、品質再評価の後発品使用推進においても、医薬品の品質向上や後発医薬品の普及等すでに先行の日本からみると、当然のことと思うかもしれない。

しかしながら、無視できないことは、品質再評価と量的購買の実施スピードだ。品質再評価は、2016年スタート、品質再評価適合品を対象とした量的購買も2019年1月(「4+7都市」モデルの落札品目)開始された。4年間で、上記の結果を出したのは、普通ではない。新しい医療制度を構築しつつある中国へ医薬品を導出するには、その機会を見逃さずに、スピード感をもって実行するのが要になるだろう。また、そのためには、現地法人の設立、現地企業との提携などで組織力、情報収集力などを備えることが重要と考える。

 

 

※対象品種のグルーピングに基づきカウントされている。1回目は2018年11月「4+7都市」で31品種(結果は25品種が落札)を対象に試験的に実施、2019年9月、同じ品種を対象に25都市に拡大して実施、 2回目は2020年1月新たな33品種(結果は32品種が落札)を対象に行われた。3回目は2020年8月20日新たに56品種(結果は55品種が落札)を対象に行われた。

 

出典:

“国家组织药品集采成效显著:平均降价一半多,年节约539亿”(李紅梅/人民日報、2020-10-14)

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