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中国の保険薬について:(1)公的医療保険制度及び抱える課題

中国市場

2020.10.12

中国の医療保険、それと関連する保険薬、薬の価格等を中心に、お知らせしたいと思います(全3回を予定)。今回は、まず中国の公的医療保険制度とそれに係る課題についてです。

 

2つの公的医療保険 

中国の公的医療保険は、「皆保険」の目標を掲げているが、保険の加入には強制と任意が併存しており、日本のような国民皆保険ではないのが現状である。現在は、都市か農村の戸籍、就業の有無によって大きく2つの公的医療保険に分類されている。

1つは、「都市職工基本医療保険」(以下、「職工保険」と略す)という都市で働く企業の会社員や自営業者、公務員などを対象にする保険である。当該保険は1951年から発足し、1998年改正され、加入が義務付けられている。

もう1つは「都市・農村住民基本医療保険」(以下、「住民保険」と略す)である。それは都市戸籍で非就労者・学生・児童などを対象とする旧「都市住民基本医療保険」と、農村住民を対象とする旧「新型農村合作医療保険」が2016年統合された保険であり、任意加入である。

国家医療保障局の統計により、2019年の公的医療保険の加入者は13.5億人を超え、全国人口の95%をカバーしている。そのうち、「職工保険」の加入者は約3.3億人であり、「住民保険」の加入者は約10億人である。

 

保険の給付

保険の給付は地域や条件によっても異なるが、2つとも基本的な医療費、高額な入院費や特殊疾病通院費などの2段階で給付できるように制度上で設けられており、日本の保険制度とは異なるところが多い。「職工保険」では通院治療費や薬代の支払いに充てられる費用の保険免責部分を負担する(保険免責)制度が導入されている。また高額医療費に関しても、日本の高額療養費制度と異なり、上限額が設けられており、20万元(約300万円)など限度額を上回る医療費は自己負担になる。一方、「住民保険」では、医療費が高額となった場合、官民協働運営されている大病医療保険から給付され、上限額が撤廃されている地域が多い。「職工保険」と比べて、給付限度額が低く設定されている且つ、自己負担(北京市の場合、大病医療保険では3-4割の自己負担あり)も高く設定されている。

例えば北京市で通院すると、「職工保険」の場合、自己負担1,800元(約27,000円)、給付限度額2万元(約30万円)、そのうち、病院等級によって10%か30%の自己負担である。「住民保険」の場合、病院の等級によって100元か550元(約1,500/8,250円)の全額自己負担、給付限度額3,000元(約45,000円)、その中自己負担45%か50%である。そのように二つの制度間の格差が大きい。「職工保険」が優遇されている場合が多い。相対的収入が低い非就労者や農村住民にとって実質的に大きな負担を感じる場合が多い。

 

保険料:企業の負担が重い

「職工保険」の保険料は労使折半ではなく、企業側により重い負担を設定されている。例えば北京市の場合、雇用主は2段階ともに合計10%の負担で、従業員は2%の基本医療保険料と3元の高額医療費保険の負担となる。「住民保険」の場合は、年齢等に応じて地方政府が毎年それぞれ決定し、市・区の財政で一定額の補助が拠出されている。2020年北京市の場合、学生・児童と高齢者はそれぞれ300元(約4,500円)、非就労者(労働年齢内)が520元(約7,800円)を年額の保険料として納付するとともに、市・区の財政から学生・児童に1人1,610元(約24,150円)、高齢者に1人4,180元(約62,700円)、非労働者に1人2,150元(約32,250円)の補助が拠出されている。大病医療保険の保険料は、基本医療保険基金から転用され、別途に徴収することはない。

 

少子高齢化の影響、財政への圧迫

中国人口の高齢化は速いスピードで進んでいる。国家統計局のデータにより、2019年には60歳以上の人口は2億5,388万人で、総人口の18.1%を占め、そのうち1億7,603万人が65歳以上で、総人口の12.6%を占めている。60歳以上の人口と65歳以上の人口は、前年比0.2ポイントと0.7ポイント増加した。高齢化とともに少子化も進んでいる。2018年の新生児は1,523万人、出生率は1.1%で、前年より200万人減少した。2025年には60歳以上の人口は3億人に達すると言われている。 2040年に、0-20歳は20%以下、65歳以上は20%以上、中国の人口高齢化はピークに達すと予想されている。

少子高齢化を背景に、「職工保険」の被保険者は、在職者と定年退職者に分類され、定年退職者の割合は年々増加し、2019年は26.4%を占めており、今後さらに増加すると予想される。また1998年の改正で、定年退職者には基本医療保険の保険料負担がなくなり、自己負担割合も在職者より軽減されており、基本医療保険からの給付は年々増加している。

高齢者への給付の増加、投薬や治療の高額化、医療改革に伴う給付範囲の拡大、物価の上昇など、医療保険基金をとりまく環境が変化しており、財政圧迫の改善が喫緊の課題になっている。

基金への財政圧迫に限らず、上掲の通り、制度間、地域間の需給格差のように、多くの問題を抱えている。それらの問題を改善するために、国務院が「医療安全保障制度の改革を深めることに関する意見」(2020年2月25日)を発表した。2025年までにより成熟し、安定した医療保障制度を目指し、医療保障制度の改革の方向性を定めた。

 

次回は保険薬の償還リスト、薬価、薬価交渉等について紹介する予定です。

 

参考:

「2019年医療保障事業発展統計快報」(国家医療保障局、2020年3月30日)

「北京市基本医療保険規定」(北京市人民政府令158号、2001年実施)

「北京市都市・農村住民基本医療保険弁法実施細則」(2017年11月30日発行、北京市人力資源と社会保障局)

「都市・農村住民基本医療保険の資金調達基準および関連する方針の調整に関する通知」(2019年11月11日発行、北京市医療保障局)

「2019年国民経済と社会発展統計公報」(2020年2月28日、国家統計局)

「医療安全保障制度の改革を深めることに関する意見」(2020年2月25日、国務院)

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