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新薬の特許期間の延長、パテントリンケージに係る中国での医薬品知財の最新情報

中国薬事

2020.07.30

2020年7月3日、『中国特許法』の第4次改正案が公表され、8月15日まで意見を募集されている。この改正案では、新薬の特許期間の延長、パテントリンケージ(Patent linkage)など医薬品の特許において大きな進歩がなされた。

今年1月に成立した「米中貿易協議書」において医薬品特許の有効期間の延長、パテントリンケージについて言及しており、その背景から今回の改正案は基本的にその協定と一致していると言われている。しかしながら、実際の具体的な規定や手続きにおいては、中国独自の規定もあり、異なる点も多くあると考えられる。

 

1.新薬の特許期間の延長

新しい改正案で特許期間の延長を以下のように示している。

「中国での販売が承認された新薬発明の特許については、国務院の特許管理部門は、特許権者の要求に応じて、一定期間の補償を付与することができる。 補償期間は5年を超えてはならず、新薬の上市後の有効特許期間の合計は14年を超えてはならない。」

現行の特許法では、新薬の特許保護期間は一般の特許保護と同じ扱い、出願から20年間の保護、そして新薬に対する「モニタリング期間」(最長5年)がプラスされるという設定であった。

2019年1月公表されていた特許法の改正案で、初めて特許期間の延長を示していたが、その対象は「中国の国内及び国外で同時期に上市の承認を申請するイノベーション薬の発明特許」(以下、国内外で同時期のNDA申請と略す)と限定されていた。

今回の改正案では、2019年1月の改正案を踏まえ、特許期間の延長対象の範囲を拡大し、その要件が外された。まずその対象は “イノベーション薬”から“新薬”に変わったことで範囲が拡大された。中国の医薬品の申請カテゴリーによると、イノベーション薬は第1類で中国国内外とも未上市薬、第2類は改良型新薬(新製剤、新適用症等の新薬)であり、今回の改正案で、第1類のみならず、第2類まで拡大された。また、要件“国内外で同時期のNDA申請”が外され、中国企業にとっても、外資企業にとっても中国と海外の申請を同時期に行わなければならない負荷が減ったことになる。

 

2.パテントリンケージ

新しい改正案で、パテントリンケージについての条文が新たに追加された。

主な内容としては、「権利保有者は、上市申請する医薬品の関連する技術が中国上市薬物特許情報登録プラットフォームに掲載された関連する特許権の保護の範囲内にあると判断した場合、薬物販売承認申請の公開日から30日以内に人民法院に訴訟を起こすか、国務院の特許行政部門に行政決定を申請することができる。」

つまり特許権者(先発医薬品メーカー)がNMPAに申請する後発医薬品が特許侵害になると確認してから、訴訟を起こすか、行政決定を申請するかという仕組みである。それは、ジェネリック医薬品の販売前に特許権者(先発医薬品メーカー)に通知または通知を受けられるようにする米国のタイプ、先発医薬品メーカーとの事前調整を求める日本のタイプともまた違う制度に見える。特許権者は自社の特許侵害になるかどうか自ら主導でチェックしなければならない仕組みである。

また「人民法院または国務院の特許行政部門は、特許権者の要求を受け入れた日から9か月以内に有効または行政決定を下さなければならない」と期限を規定した。それは米国の30カ月の期間と大きく異なり、また「薬物販売承認申請の公開日から30日以内」の規定も米国の「ジェネリック医薬品の申請通知を受け取った45日以内」とも異なっている。

そして医薬品の販売申請から承認までの特許紛争の解決については薬事当局(NMPA)と特許行政部門が連携して具体的な規定や手続きを決める方向を改正案で示している。したがって、薬事当局、特許部門、裁判所の三者がつながることにより、後発医薬品の販売承認前の特許侵害の有無をチェックできる仕組みになっていくだろうと予想する。

このパテントリンケージの取入れることによって、製薬会社間で発生する可能性のある特許紛争は、ジェネリック医薬品の上市前に事前に解決することができ、先発医薬品メーカーとジェネリック医薬品メーカーの両方に市場の予測可能性と確実性を提供できる。

 

3.日本企業へのチャンス/チャレンジ

かつて中国の製薬がジェネリック医薬品の天下と言われていたが、経済の成長につれ自国内の医薬品企業が育成、強化され、また品質再評価や量的購買などの市場環境の改革によって、品質再評価に合格した品目のみ残され、不合格となったジェネリック医薬品の多くは淘汰されつつある構図となり、政府主導によるイノベーションの推進により、製薬業界は「完全な模倣」から「模倣と革新」に徐々に移行しつつあり、今後さらにバイオ薬の分野でも追いつくことまで期待されている。 医薬品特許期間の延長やパテントリンケージなどに関する今回の特許法改正案は米国など外部からの圧力もあるが、むしろ、自国内の製薬業界が期待している内容でもあると考えられる。この変更によって、先発医薬品メーカーはもちろん、多くのジェネリック医薬品メーカーもある程度の開発や革新を推進できる環境となり、革新的医薬品の開発はますます加速するだろう。

日本製薬企業にとって、中国への進出に対する不安は、知財の保護がよく挙げられる。今回の改正案は意見募集の段階にあるが、具体的な手続きについては少し検討・修正されると考えられるものの、新薬の特許期間の延長やパテントリンケージの方針は逆戻りしないと思われる。したがって、特許保護について中国が日欧米と同じようなラインになり、日本企業にとっても中国進出による特許上の不利あるいは侵害へのリスクが大幅に軽減されるだろう。先発医薬品メーカーにとって、特許保護の期間延長があるため、中国で新薬の承認申請はさらに有利になり、侵害しているジェネリック医薬品は中国で上市承認を取得する前に特許訴訟が開始されれば、侵害による損害のリスクも軽減される。ジェネリック医薬品メーカーも、自社の開発や技術を活かした医薬品が有利になり、安心して中国へ導出し、より多くの人にアクセスできるようになるだろう。

日本の製薬企業にとってはチャンスではあるものの、チャレンジでもある。特許期間の延長、パテントリンケージなど、対応する部門、具体的な手続きや期限などは日本と異なり、どのような対応方法を取るべきか。また自社の開発や技術はそのまま中国の市場、開発体制に応用できるかどうかどのように見極めるか。そして開発の早期から、中国での特許の登録・維持・保護などどのような体制で対応するのかといったような課題がある。したがって早い段階から信頼できる専門的なパートナー(特許の出願経験があり、中国で薬事対応が可能な企業)との連携を視野に入れて検討してもよいだろう。

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